健康保険歯科医療給付は昭和2年1月から被保険者1人当たり年額68銭5厘の人頭請負方式で始まったが、昭和2年4月からは歯科補綴の給付を請負項目から外し勤労定額給付とすることとなり、補綴への保険給付には事前承認を必要とするように改めた。
その後歯科の給付についても、請負方式では一点単価の平準化が困難であることとされ、9月からは歯科についてはすべて「金額を表示する」定額方式に改めることになった。「人頭請負方式」は被保険者全体の一年間の医療を歯科医師会が一定金額で請け負い、診療報酬の支払い、審査などの運営を歯科医師会が行う方式である。歯科医療を一定額で請け負っているので稼働点数が多ければ、その月の一点単価は低くなるし、反対なら高くなるというように単価は道府県ごとに、また月ごとに変わった。
請負方式では一点単価の平準化が困難ということで、歯科医療の給付全部を定額方式にしたわけであるが、一般の医療給付においては請負方式が続けられていたこと、被保険者の受療傾向が安定してきたことで、昭和8年にはまた請負方式に戻って契約されている。
そして昭和18年になって、一般の医療とともに請負方式から、現行のような単価を一定にした単価点数方式に移っている。
今回は昭和2年から8年までの7年間における被保険者診療状況等の統計表を見ていく。
○昭和2年から8年までの7年間における被保険者診療状況(表1)
○保険歯科医診療率(表2)
政府管掌の保険歯科医診療率は40〜42%、組合管掌での保険歯科医診療率は13〜15%。
政府管掌で診療率が高い府県は、山形、群馬、長野、愛知、福井、和歌山、大阪など。
○被保険者受診者率(表3)
政府管掌の被保険者受診者率は1.5〜1.8%、組合管掌での被保険者受診者率は1.3〜1.4%。政府管掌の被保険者受診者率は宮城、富山、石川、福井、沖縄等が低い。
○診療を受けた被保険者一人当たり診療費(表4)
政府管掌の診療を受けた被保険者一人当たり診療費は昭和3〜5年までは4.7円程度であったが昭和6年の財界不況による1割1分強の減額で3.5円程度に低下した。 昭和7・8年の組合管掌での診療を受けた被保険者一人当たり診療費は3.48円〜3.23円。
○診療した保険歯科医師一人当たり診療報酬(表5)
政府管掌の診療した保険歯科医師一人当たり月額診療報酬は昭和3〜5年までは25円程度であったが昭和6年の財界不況によって18円程度に低下した。 昭和7・8年の診療した保険歯科医師一人当たり月額診療報酬は13円で政府管掌より少ない。政府管掌において長野県の診療した保険歯科医師一人当たり診療報酬が多いのが目立つ。